『リコリス・リコイル』は、ガンアクションの迫力だけで見せ切る作品ではない。
もちろん、動きは華やかだし、銃撃戦の見応えもある。けれど、見終えたあとにいちばん残るのは、喫茶リコリコで流れる何気ない時間と、その時間のなかで少しずつ変わっていく千束とたきなの見え方だった。
私はこの作品を、秘密組織の任務を描くアニメであると同時に、ふたりの距離の変化を眺めるアニメだと思っている。
街の平穏を守る側の少女たちが、店で働き、誰かの頼みごとを受け、たわいない会話を交わす。その日常があるからこそ、任務の場面での選択や表情がただの演出で終わらない。そこが、この作品のかなり好きなところだ。
まずは簡単に作品紹介をしておこう。
『リコリス・リコイル』は、Spider Lily原作、A-1 Pictures制作のオリジナルTVアニメで、監督は足立慎吾、ストーリー原案はアサウラ。錦木千束を安済知佳、井ノ上たきなを若山詩音が演じる。公式サイトと公式ニュースで確認できるTVシリーズは全13話だ。
物語の入り口は、犯罪を未然に防ぐ秘密組織DAと、そのエージェントである少女たちリコリス。千束とたきなが働く喫茶リコリコもその支部のひとつで、受けるオーダーはコーヒーやスイーツだけではない。子どもの世話、買い物代行、日本語講師まである。
この時点で、もう作品の顔つきがよく出ていると思う。任務だけでもない。日常だけでもない。その両方を行き来する話なのだ。
千束とたきなの組み合わせが、ずっと見ていられる
この作品を観ていて、まず面白いのはやはり千束とたきなの並び方だと思う。
千束は軽やかで、人との距離を詰めるのが早い。一方のたきなは、感情をそのまま前に出すより先に、まず判断が来る。最初から気持ちよく噛み合うふたりではない。だからこそ、同じ出来事に対して見ているものが少しずつ違うし、その違いが会話の温度にそのまま出る。
でも、そのずれがただの対立で終わらないのが良い。
相手に腹を立てることもあれば、理解できないまま引っかかることもある。そういう積み重ねのなかで、ふたりの関係がゆっくり形を変えていく。ここがちゃんと面白いから、バディものとしても見応えがある。
アクションが派手なだけで終わらない
『リコリコ』は銃器アクションの印象が先に来やすい作品だと思う。実際、そこに惹かれて観始める人も多いはずだ。
ただ、観ているうちに思うのは、この作品のアクションは派手さだけを競っていない、ということだ。
誰が何を守りたいのか。何を譲れないのか。どこで踏みとどまるのか。そういう人物側の理由が場面ごとに乗っているので、戦闘が単なる見せ場になりにくい。だから、撃ち合いのシーンも画面の勢いだけでは終わらず、人物の選択として残る。
このあたりは、アクションそのものを楽しみたい人にも、キャラの感情を追いたい人にも届きやすいところだと思う。
喫茶リコリコの時間が、キャラクターをただの設定にしない
公式の紹介にもある通り、喫茶リコリコで受ける依頼は、いわゆる戦闘任務ばかりではない。むしろ、その外側にある頼まれごとのほうが、この店らしさをよく見せている。
私はこの時間がかなり大事だと思っている。
店で働いているとき、ふとした雑談をしているとき、事件とは別の用事で動いているとき。そういう場面で、千束の人との接し方や、たきなの不器用さがじわじわ見えてくる。設定を説明されるのではなく、過ごし方で人物像が浮かんでくるので、キャラクターに厚みが出る。
そして、その厚みがあるから、次に任務の場面へ戻ったときの印象が変わる。
さっきまで店にいたふたりが、今度は別の顔で立っている。その切り替わりが、この作品の面白さにかなり効いている。
……と言いたいところだが、この言い方は少し違うかもしれない。正確には、その切り替わりが作品全体の手触りをはっきりさせている、という感じだ。
街の風景にまで裏側が差し込んでくる
公式イントロダクションには、当たり前の日常も彼女たちのおかげ、という一文がある。短いが、かなり印象に残る説明だ。
この前提があるせいで、街の風景がただの背景にならない。
何気ない通行人も、平穏そうな空気も、そのままでは見られなくなる。見えている静けさの裏で、誰かが動いているかもしれない。そういう想像がずっとついて回る。
だから『リコリコ』の世界は、明るい場面でもどこか張っている。
喫茶店の空気がやわらかいほど、その外にあるものが気になってくる。日常と非日常が別々に置かれているのではなく、最初からひとつながりになっている作品なのだと思う。
少し人を選びそうなところ
とはいえ、誰にでもすすめやすい作品かと言われると、少し迷う。
銃器アクションや暴力表現はあるし、喫茶店でのにぎやかな時間と事件パートの緊張感の差もはっきりしている。
なので、ひたすら軽やかな日常アニメを期待して入ると、思ったより張りつめた場面が多く感じるかもしれない。逆に、最初から最後まで重たい空気で進む作品を求める人には、喫茶リコリコの寄り道のような時間が少し長く見える可能性もある。
この作品の良さは、その両方を行ったり来たりするところにある。
だから、どちらか片方だけを強く求める人とは、少し相性が分かれそうだ。
こんな人にはすすめやすい
ガンアクションは好きだけれど、人物の関係もしっかり見たい人。
バディものが好きな人。
拠点になる店やチームがあって、そこに集まる時間そのものを楽しめる人。
そういう人には、かなりすすめやすい。
全13話で追いやすいのもありがたい。長編に入るほどの気力はないが、ちゃんと満足感のある1本を探しているときにも手に取りやすい作品だ。
反対に、暴力描写がかなり苦手な人、ずっと同じ温度で進む作品を求める人には、少し合いにくいかもしれない。
まとめ
結局のところ、『リコリス・リコイル』の面白さは、任務と日常のどちらか片方にあるのではなく、その往復そのものにあるのだと思う。
秘密組織の仕事を描くから目を引く。
喫茶リコリコでの日々があるから人物が見えてくる。
そして、その人物が見えてくるから、次のアクションがただ派手なだけの場面ではなくなる。
そういう循環がきれいにできている作品だった。
まずは第1話を観て、喫茶リコリコの空気と、そこに差し込んでくる任務の気配の両方が自分に合うかどうかを確かめてみてほしい。
たぶん、その時点でこの作品と相性がいいかどうかは、かなりはっきりわかる。

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