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アニメ「ふらいんぐうぃっち」感想・紹介(ネタバレなし) 青森の空気に魔法が混ざる、静かな日常ファンタジー

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『ふらいんぐうぃっち』は、魔女が出てくる作品だが、いわゆる派手な魔法バトルの方向へは進んでいかない。
けれどその代わりに、青森の空気、季節のうつろい、家の中の静かな時間、そういうものの隣に魔法がすっと置かれている。

観ているあいだ、何か大きな事件が起こり続けるわけではない。なのに、妙に印象に残る。
一話見終えるごとに、ストーリーそのものというより、その回に流れていた風や光の感じを思い出す。

どんな話か

魔女には、15歳になったら家を出て一人立ちするというしきたりがある。
主人公の木幡真琴も、その節目にあわせて青森の親戚の家へやってくる。黒猫のチトと一緒に暮らしながら、魔女として勉強し、高校生活を送り、少しずつこの土地の日常になじんでいく。そんな導入で始まる物語である。

アニメは2016年放送、全12話。監督は桜美かつしさん、シリーズ構成は赤尾でこさん、音楽は出羽良彰さん、アニメーション制作はJ.C.STAFF。OPはmiwaさんの「シャンランラン feat.96猫」、EDは木幡真琴と倉本千夏による「日常の魔法」だ。

この作品の好きなところ

まず良いのが、魔法が生活の外側に置かれていないことだと思う。

空を飛ぶ。使い魔がいる。不思議な存在に出会う。
書き出してみると十分ファンタジーなのに、この作品ではそれらが大げさに扱われすぎない。人間の暮らしと魔女の営みが、無理なく同じ地平にある。だから観ているこちらも、驚くというより、ああこの世界ではこうなんだな、と自然に受け入れられる。

その空気を支えているのが、青森の描き方なのだろうと思う。

この作品は、景色をただきれいに見せるために並べている感じがしない。
ここで人が暮らしていて、朝が来て、夕方になって、畑や道や家のまわりに季節がちゃんとある。そういう手触りが、画面のあちこちにある。雪や風や日の傾き方まで含めて、この土地の時間が映っているので、物語が大きく動かない回でも不思議と見入ってしまう。

それから、登場人物たちの距離感もとても好きだ。

真琴はおだやかな子だし、まわりの人たちも親切でやさしい。
けれど、必要以上にべたべたしない。その加減がとても心地よい。親しいけれど近づきすぎない、相手を受け入れているけれど踏み込みすぎない。その空気があるから、会話が説明だらけにならず、見ている側も作品の中に入りやすいのだと思う。

そして何より、この作品は小さな発見をちゃんと大切にしている。

大きな目標に向かって一直線に進む話ではない。
近所で起きる出来事、何気ない会話、ちょっとした不思議、季節ごとの変化。中心にあるのはそういうものだ。けれど、その小ささが物足りなさにつながるかというと、私はそうは感じなかった。むしろ、だからこそ覚えている場面がある。派手な展開ではなく、その日の空気ごと残る作品なのだ。

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たぶん好みは分かれる

ここは先に書いておいたほうが親切だと思うのだが、『ふらいんぐうぃっち』は、毎話大きな山場がほしい人には少し静かすぎるかもしれない。

魔女ものではあるけれど、魔法の理屈を細かく掘っていく作品でもないし、戦いや対立が前面に出る作品でもない。
観ていて気持ちがせかされないぶん、刺激の強い展開を求める人には、のんびりしすぎて見える可能性はある。

ただ、その静けさこそがこの作品の魅力でもある。
何かが激しく変わり続ける話ではなく、変わらないように見える日々の中に、ちゃんと面白さがある。そこに惹かれるかどうかで、印象はかなり変わりそうだ。

こんな人には合うと思う

景色や空気まで含めて作品を味わいたい人。
魔法が出てきても騒がしすぎない物語を観たい人。
それから、長すぎない話数で、少しずつ見進められるアニメを探している人。

逆に、バトル中心のファンタジーを求めている人や、毎話はっきりした盛り上がりがほしい人、伏線が幾重にも張られた長編ミステリーが好きな人には、少し方向が違うかもしれない。

おわりに

『ふらいんぐうぃっち』は、青森の暮らしの中に魔法がまじる、静かな日常ファンタジーである。

何か大きな出来事で圧倒する作品ではない。
けれど、台所の気配や外の風や、ふとした会話のやわらかさまで抱え込んで、一日をそのままやさしく見せてくれる。

こういう作品は、観終わったあとに派手な興奮が残るというより、じわじわと好きになっていくのだと思う。
今日は少し静かな作品が観たい、そういう日に手に取る一本として、とてもいいアニメだった。