「氷菓」は、事件の派手さで引っ張る作品ではありません。
学園の部活、教室、廊下、図書室。そういう日常の空気の中で、会話の温度と表情の変化だけで謎がほどけていく。観ている最中は静かに進むのに、観終わったあとに場面がふいに頭に浮かぶ。あの感じが、けっこう忘れがたい。
私はこの作品、もっと淡々として終わると思っていた。ところがどっこい、気づけば細部を反芻している。やられた。
この記事で書くこと
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どんな作品か(ネタバレなし)
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見どころ(アニメで映える点)
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好みが分かれそうな点
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おすすめできる人/おすすめしにくい人
どんな作品?
舞台は神山高校の古典部。
省エネ主義の折木奉太郎が、好奇心が止まらない千反田えるに巻き込まれながら、身の回りの小さな謎を解いていく学園ミステリーです。大事件ドカン、ではなく、なんでこうなったんだろう? を丁寧にほどいていく面白さが軸にあります。
原作は米澤穂信の古典部シリーズ。アニメは京都アニメーション制作、監督は武本康弘。スタッフやクレジット周りは公式情報にまとまっています。
見どころ(ネタバレなし)
1)謎解きが、会話の延長で進む
「氷菓」の謎は、殺人事件みたいなものではなく、日常の違和感が中心です。
だから推理も、天才が一撃で答えを出すというより、話して、すれ違って、確認して、少しずつ輪郭が見えてくる。観ている側が置いていかれにくいのが良い。
謎が主役というより、謎を挟んだ会話が主役、みたいな回が多い印象です。
2)奉太郎の省エネ主義が、ブレーキにもエンジンにもなる
奉太郎は、やらない理由をちゃんと抱えている人物で、そこが面白い。
動きたがらないのに、えるの一言で動いてしまう。そのたびに小さな揺れが起きて、ただの謎解きで終わらないんですよね。
省エネと言いつつ、観ているこちらは省エネになれない。そこが困る(褒めてる)。
3)千反田えるの好奇心が、可愛いだけで終わらない
えるは明るいヒロイン、で片付けるには圧がある。相手の心を動かしてしまう近さがある。
あの距離の詰め方は、人によっては眩しく見えると思うし、だからこそ奉太郎との並びが際立ちます。
ふたりの関係が少しずつ変わっていく過程が、この作品の肝のひとつ。
4)映像が、情報の渡し方として働いている
京アニ作品らしく作画が綺麗、で終わらせるのはもったいないです。
視線、間、空気の重さ、気まずさ。言葉にしづらい部分を、画面の組み立てで伝えてくる回が多い。あれはアニメで観る意味がちゃんとある。
最終話のスタッフクレジットも、公式で確認するとしみじみします(いろいろ思う)。
好みが分かれそうな点
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テンポは速くありません。派手な山場が連続する作品を求めると、静かに感じる可能性があります。
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答えそのものより、そこに至る会話や感情の動きが中心の回が多いです。
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大きな決着で終わるというより、日常が続いていく形で締まるので、明快なカタルシスだけを求める人は物足りないかもしれません。
こんな人におすすめ
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学園ものが好きで、会話の機微を丁寧に見たい
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日常の小さな出来事から、人物像が浮かび上がる作品が好き
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謎解きだけでなく、キャラ同士の距離の変化も楽しみたい
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1話完結に近い回も多い作品を探している(区切って観やすい)
おすすめしにくい人
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常に派手な事件や強い刺激を求めている
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バトルやスピード感を最優先で観たい
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ミステリーは大きな事件中心で観たい
まとめ
「氷菓」は、日常の謎をほどく面白さと、登場人物の距離が少しずつ変わっていく面白さが、同じ速度で進む作品です。
22話の中で、関係の見え方が静かに更新されていく。だからこそ、観終わったあとに場面がふいに戻ってくる。
雰囲気重視の学園ミステリーが好きなら、たぶんこの作品、あとから効いてきます——と言いたいところですが、そういう言い方はやめておきます。
代わりにこう言います。気づいたら、思い出してしまう作品です。
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