こんなにテンションが上がるのに、こんなに心の深いところまで入り込んでくるとは思っていなかった。
最初に目を奪われるのは、やっぱり映像だと思う。光の走り方、空間の切り取り方、戦闘のスピード、そのどれもが気持ちいい。画面に映るものすべてが、いちいち格好いい。思わず前のめりになって見てしまうような、あの勢いがある。
なのに、見進めるうちに、この作品が本当に見せてくるものは別のところにあるのだと気づく。
ただのバトルアニメではない。派手な異能戦の話でも終わらない。気づけばそこにあるのは、生き方の話であり、理想の話であり、自分が信じてきたものをどう抱えていくのかという問いだった。
その変化が、たまらなく好きだ。
作品の話
舞台は冬木市。
願いを叶えるという聖杯をめぐって、魔術師と英霊が戦う聖杯戦争が始まる。その争いに、普通の高校生活を送っていた衛宮士郎が巻き込まれていく、というのが導入である。
この入り方がまずいい。
さっきまで確かに日常の中にいたはずなのに、一歩踏み外しただけで世界の裏側のような場所へ連れていかれる。あの切り替わりの鮮やかさが見事で、初見でも物語に入り込みやすい。
しかもUBWは、その世界観の見せ方がうまい。設定は決して軽くないのに、わからないまま置いていかれる感じが少ない。派手な戦いに引っ張られながら、自然とこの作品のルールを飲み込んでいける。
だから最初から最後まで、気持ちよく走っていけるのだと思う。
こんなに戦闘シーンが楽しみになる作品、そう多くない
まず語りたくなるのは、やはり戦闘シーンである。
バトルのたびに、今回はどんな見せ方をしてくるのだろう、と期待してしまう。スピード感があるのはもちろんだが、ただ速いだけではない。距離の詰め方や間合いの圧力まで伝わってくるから、見ていてずっと引き込まれる。
剣がぶつかる音ひとつ、視線が交差する一瞬ひとつにも意味があるように感じられて、戦いそのものが会話のように見えてくるのも面白い。
単なる力比べでは終わらないのだ。
それぞれが何を信じ、何を背負って立っているのか。その意志ごとぶつけ合っているから、どの戦闘にも熱がある。画面の美しさに見惚れながら、同時に感情まで揺さぶられる。あの感覚が本当に贅沢だと思う。
UBWが忘れられなくなる理由は、理想の話をまっすぐやるからだと思う
そして、この作品が本当に強いのはここだ。
UBWは、戦いの格好よさを見せながら、その中心でずっと理想の話をしている。
正しさとは何なのか。誰かを救いたいという願いは、どこまで抱え続けていいのか。自分が信じたものが、いつか自分自身を追い詰めるとしても、それでもなお手放さずにいられるのか。
こういう問いを、逃げずに真正面から扱ってくる。
だからふとした台詞が重い。軽い名言集のように消費されるのではなく、その人物がそこへ至るまでに抱えてきた時間や痛みごと、こちらに投げ渡される感じがある。
特にアーチャーの存在は大きい。
彼の言葉は鋭い。けれど、ただ相手を言い負かすための鋭さではない。自分が通ってきた道の重みを含んだ言葉だから、見ている側にも深く刺さる。ああ、この人は綺麗ごとが嫌いなのではなく、綺麗ごとがどこで壊れるかを知ってしまったのだな、と感じる瞬間が何度もある。
その相手として士郎が立つから、この物語はさらに熱くなる。
士郎の考え方は危ういところもあるし、見ていて心配になることも多い。でも、だからこそ目が離せない。簡単に賢くなったり、器用に折り合いをつけたりしないまま、自分の信じるものと向き合っていく。その不器用さごと応援したくなる。
遠坂凛がいるから、物語がぐっと見やすくなる
それから、遠坂凛の存在もとても大きい。
この人がいるだけで、作品の空気がきりっと引き締まる。強くて、頭の回転が速くて、ちゃんと自分で動ける。そのうえで、冷たさだけに寄らないやさしさもある。
頼もしさがあるヒロイン、という言い方だけでは少し足りない気がする。
凛は、ただ隣にいる人ではなく、物語を前へ進める推進力のひとつなのだと思う。士郎とのやり取りも見ていて気持ちがいい。片方が引っ張るというより、二人で呼吸を合わせながら進んでいく感じがある。その関係性が、シリアスな場面の続く作品の中でとても効いている。
……と言いたいところだが、この言い方はやめておこう。
とにかく、凛がいることで物語に軽やかさが生まれる。重たいテーマを抱えた作品なのに、息苦しくなりすぎないのは彼女の存在によるところが大きい。
見終えたあと、派手だっただけでは終わらない
UBWの好きなところは、観ている最中の高揚感と、見終えたあとの余韻がちゃんと両立しているところだと思う。
戦闘シーンを見ているあいだは、純粋にテンションが上がる。格好いい、熱い、次はどうなるのか気になる。その気持ちだけでも十分楽しい。
でも、最終的に残るのはそれだけではない。
理想を持つことの美しさと危うさ。誰かを救いたいという願いの眩しさ。そうしたものが、見終わったあとも静かに残り続ける。自分ならどうするだろう、と考えてしまう。
そこが、この作品のすごいところなのだと思う。
熱いエンタメとしてしっかり満足させてくれるのに、最後はちゃんとこちらの内側に問いを残していく。ただ派手で終わらない。ただ難しくて終わらない。その両方をやってのけるから、何度でも見返したくなるのだ。
おわりに
『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』は、映像の華やかさに惹かれて観始めても、最後には言葉と思想のぶつかり合いに夢中になっている作品だと思う。
格好いいシーンは何度見ても格好いいし、好きな場面を見返すたびにまた気持ちは高まる。けれど本当に忘れられないのは、その奥にある生き方の話なのだろう。
派手さもある。熱さもある。なのに、それだけでは終わらない。
だから見終わったあと、もう一度最初から観たくなる。
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